「年収300万円あれば永住許可が取れますか」「夫婦共働きなら収入を合算できますか」「地方在住でも全国の平均収入が基準になるのでしょうか」。永住申請では、このような質問が多くあります。
2026年10月1日、出入国在留管理庁は「永住許可に関するガイドライン」を改定し、収入の評価方法を具体化しました。ただし、必要年収が一律に「○万円」と公表されたわけではありません。また、収入水準だけで許可が決まるものでもありません。
この記事では、旧ガイドラインとの違いと、単身者・家族世帯・海外扶養親族を含む考え方を解説します。
目次
- 2026年10月改定で何が変わったのか
- 独立生計要件とは
- 日本人世帯の平均収入を上回る水準とは
- 単身者と家族世帯の年収の考え方
- 配偶者の収入を合算できる場合・できない場合
- 海外の扶養親族も世帯人数に影響する
- 現在の年収だけでなく将来の収入と年金も見る
- 永住申請前の確認ポイント
1.2026年10月改定で何が変わったのか

従来のガイドラインでは、独立生計要件について、公共の負担にならず、保有する資産や技能などから将来も安定した生活が見込まれることが中心に示されていました。
2026年10月改定では、その考慮方法がより具体的になりました。収入については、原則として同一生計世帯単位で、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているかを考慮すると明記されています。また、将来の年金見込額や、必要に応じて不足分を補える金融資産の考え方も示されました。
ここで施行時期には注意が必要です。2026年10月1日から先行して適用されているのは、改定ガイドラインのうち主に収入に関する部分です。改定ガイドライン全体は、原則として2027年4月1日以降の申請から適用されると案内されています。
法務大臣の記者会見でも、収入は従来から審査要素であり、今回の改定はその考慮要素を明確化したものと説明されています。つまり、収入審査が突然ゼロから始まったのではなく、これまでの審査で見られていた内容が、より具体的に示されたと理解するのが適切です。
2.独立生計要件とは
独立生計要件とは、現在だけでなく将来も、公共の負担となるおそれがなく、日本で安定した生活を続けられると見込まれることです。
審査では、これまでの在留状況、現在の収入、将来見込まれる収入、資産、技能などが考慮されます。単に申請時の給与額が一定額を超えているかだけを見るものではありません。
なお、日本人・永住者・特別永住者の配偶者や子など、法律上、独立生計要件の適合が不要となる場合があります。自分にどの要件が適用されるかは、申請区分ごとに確認が必要です。
3.日本人世帯の平均収入を上回る水準とは
改定ガイドラインは、申請時点の世帯年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているかを考慮するとしています。
しかし、誰にでも共通する具体的な必要年収は公表されていません。そのため、「年収300万円なら必ず許可」「地方なら基準が低い」などと断定することはできません。
ガイドラインの表現は「日本人世帯の平均収入」であり、少なくとも公表文上、居住する都道府県ごとに異なる金額を適用するとは示されていません。ただし、永住許可は収入だけでなく、納税・社会保険、在留状況、法令遵守などを含む総合判断です。
4.単身者と家族世帯の年収の考え方

単身世帯では、申請者本人の年収がそのまま世帯年収になります。
家族と住居・家計を共にしている場合は、原則として、申請者と同一生計世帯を構成する人の収入を合算して世帯年収を考えます。そして、その世帯年収を世帯人数に応じた水準と比較します。
もっとも、同居していても、成人して親の扶養から外れている人などは、親の収入に含めて一つの世帯年収として評価するのではなく、その人自身が必要な水準に達しているかを考慮するとされています。同居している人数を機械的に合算すればよいわけではありません。
5.配偶者の収入を合算できる場合・できない場合

配偶者と住居・家計を共にし、配偶者が就労資格に基づいて安定した収入を得ている場合は、同一生計世帯の収入として合算の対象になり得ます。
一方、「家族滞在」など、就労を目的としない在留資格の人が資格外活動許可を受けて得る収入は、例外的・限定的な就労によるものです。改定ガイドラインでは、このような収入は世帯年収へ合算する対象としないと明記されています。
したがって、共働きであれば必ず夫婦の収入を合算できるわけではありません。 配偶者の在留資格、就労の根拠、雇用の継続性を確認する必要があります。
6.海外の扶養親族も世帯人数に影響する

申請者が扶養している親族は、日本で同居していなくても、外国に住む親族を含めて世帯人数に加算するとされています。
例えば、申請者が日本では単身で暮らしていても、母国の配偶者や子へ継続して送金し、扶養している場合があります。このとき「日本では一人暮らしだから単身世帯」と単純に考えることはできません。
また、世帯人数が5人以上の場合は、人数に応じた年収水準に、生活費等の増加分を加算して評価するとされています。海外扶養親族を税務上の扶養に入れている場合などは、申請前に人数と送金状況を整理しましょう。
7.現在の年収だけでなく将来の収入と年金も見る
独立生計要件は、申請時点だけでなく、将来も安定した生活を維持できるかを見る要件です。そのため、雇用の安定性、これまでの収入の推移、今後見込まれる収入、資産や技能も考慮されます。
改定ガイドラインは、将来の年金受給見込額も考慮するとしています。受給見込額が必要な水準に足りない場合でも、不足する生活資金を補える金融資産があると認められれば、それを踏まえて評価する考え方が示されています。配偶者がいる場合には、原則として夫婦の受給見込額を合算して検討します。
ただし、預金があれば現在の収入不足を必ず補える、という単純な制度ではありません。年齢、収入の継続性、年金、資産などが総合的に見られます。
8.永住申請前の確認ポイント
申請前には、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 自分に独立生計要件が適用される申請区分か
- 同一生計世帯に含まれる人は誰か
- 合算予定の家族は就労資格に基づいて働いているか
- 海外を含め、扶養している親族を漏れなく整理したか
- 現在の収入だけでなく、複数年の安定性を説明できるか
- 税金、年金、健康保険料等を期限どおり納めているか
- 将来の年金見込額や資産を確認したか
今回の改定で、「必要年収は一律○万円」という答えが示されたわけではありません。むしろ、誰の収入を合算できるのか、何人分の生活を支えているのか、今後も安定した生活を続けられるのかを、世帯単位で丁寧に確認する必要性が明確になりました。
ワイズリンクス行政書士事務所では、申請者の在留資格、家族構成、扶養関係、収入・納税状況を確認し、永住申請に必要な整理をお手伝いしています。「年収だけで判断できない」と感じた段階で、早めに状況を確認することをおすすめします。
主要な公式情報
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定)」
https://www.moj.go.jp/isa/10_00279.html
- 出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/eizyuu_00001.html
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html
- 法務省「令和8年10月2日 法務大臣閣議後記者会見の概要」
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_01180.html
確認日:2026年10月19日















